燃料税増税を発端に、11月末から毎週末フランス全国各地でデモが起きるようになって2カ月弱。
黄色いベストと呼ばれる抗議者の姿も、テレビでおなじみになりつつあります。
しかし、1月に入ってからはだんだん規模が小さくなってきています。
また破壊行為による街の被害もあって、フランス人の中でも倦厭モードが広がりつつあり、住人としてはニュースに慣れてきてしまった感もあります。
そんな中、1月初めの土曜日、日本から来ていた甥っ子と家族と行ったパリ・シャンゼリゼ通りで、突然デモが始まりました。
シャンゼリゼ通りで突然デモが始まった時の様子と、もしフランス観光中にデモに遭遇したらどうしたらいいかについて、フランス在住あおいそらが実体験を通してお伝えしたいと思います。
フランスのデモの今、観光にどんな影響がある?
2ヶ月近くも毎週末続いているフランスのデモ。
最近、日本からフランスに一人できたわたしの友人は、出発する前に「フランスに行くなんて大丈夫なの?」と周りから何回も聞かれたとのこと。
実際に、フランスへの旅行をキャンセルしたり、イタリアやスペインに行き先を変えた日本人観光客の方が今月はかなりいたとのことですし、12月の初旬は破壊活動を恐れたベルサイユ宮殿や美術館などの施設が閉館されてしまったため、せっかくフランスに来たのに、市内観光などのツアー自体がキャンセルになったケースもあったようです。
でも、デモが起きるのは週末だけ。特に土曜日です。
デモに便乗して店を荒らしたり、物を壊す人々も、一般人を襲ったという話は聞いたことはないし、普通に生活している分には何の危険もなく、平日はデモの気配を感じません。
それに、現地フランス人の間でも「もうデモをする人たちの気持ちは世の中で十分に理解されている。これ以上経済への悪影響を出すわけにはいかないよ!正直いつまで続けるんだ!」という声も高くなってきています。
このような流れの中で、デモの規模は急激に縮小しつつあります。
デパートを始め、デモが行われる可能性の高い通りの近くの店舗でも、土曜日は通常営業です。
ところが、冬休み中だったこともあり、曜日の感覚が鈍くなっていて、デモについての認識が薄くなっていた1月最初の週末。
日本から来たおいと一緒に、彼の日本への帰国日前日に家族みんなで凱旋門に登ってシャンゼリゼの眺めを楽しもうと、通りを歩いていると、なんともなかった状況から、突然目の前でデモが始まるという状況がおきました。
そのときの様子と、安全のためにとった対策をお伝えしますね。
フランスのデモの原因きっかけとなった燃料税については、こちらの記事でまとめています。
フランスのパリ・シャンゼリゼ通りでデモが突然始まった
その日は凱旋門に行く前に、家族みんなが大好きなマカロンを買いに、ロクシタンxピエールエルメのカフェにまず向かっていました。
別の日に行ったときのレポートですが。
すると、通りのど真ん中にどんどん黄色いベストの人たちが集まり始めていることに気がつきます。
黄色いベストの人たちは、「マクロン(大統領)辞職!」と言いながら、凱旋門に向かって歩いていきます。
黄色いベストの人たちの人数はどんどん増えているように見えました。
まさか凱旋門に登れなくなる?と焦ったわたしたちは大急ぎで凱旋門にむかいます。
凱旋門ちかくまでやってくると、すでに凱旋門近くの宝石店はシャッターを閉めていました。
残念ながら、ほんの少し前まで普段どおりだった凱旋門の見学入り口に続く地下通路も、完全に扉が閉められていました。
一般の通行人は比較的落ち着いていて、これから何が起きるのだろうと状況を見守っている状況です。
警察も見かけましたが、通行人に対しては、なんの安全の指示も出しません。
約束の時間までどこかで待機していたのか、ぞくぞくと黄色いベストの人たちが集まってきます。
そうこうしているうちに、さっきの黄色いベストの一団が凱旋門の近くまでやってきて、まばらだった憲兵隊も凱旋門側に列を作り始めて、車で凱旋門の周りのロータリーを封鎖。
デモの参加者の人達が国歌「ラ・マルセイエーズ」を高らかに歌っています。
にらみ合いが始まりました。
*当日の写真ですが、撮影はわたしではありません。子供が一緒で、自分では写真を撮る余裕はありませんでした。
フランスでデモに遭遇してとった対策は?
わたしにとってもこんな経験は初めてですし、これからどんなことが起きるのかとても気になったのですが、何が起きるかわからない中、安全を優先。
日本から来たおいは当然のこと、普段とは違う尋常ならぬ雰囲気にうちの子供たちも固唾をのんで、まるで固まったようにこの様子をずっと見ていましたが、このライブ体験はもうこれで十分だと判断し、
何も起きていないうちに早々に退散することにしました。
だんだん薄暗くなって行く中で、どんどんデモの参加者が凱旋門の方に向かっていきます。
衝突が始まらないとも限らないので、とりあえずこの憲兵隊と抗議者のにらみ合いの場所からは早く遠ざかったほうがいいと判断。
もとからこのあとモンテーニュ通りのきれいなイルミネーションを見る予定だったので、黄色いベストの人たちの進む方向と逆方向、コンコルド広場のほうに向かって急ぎました。
路上にもう車はありません。
このとき、シャンゼリゼ通りの歩道は広いので、建物側のほうを歩くことに。
車道では、脇道からきた車が車のいないシャンゼリゼ大通りに抜けてきて、何を思ったのか急旋回したり、催涙弾か何かが何度か爆発音を立てたりしていました。
一方、歩道では一般の人たちが普通に歩いていたし、緊張するような状況はまったくなかったので、まるで車道で起きている世界とは別世界のようで、不思議な感じがしました。
抗議者の方々は普通の人に危害を加えるようなことはないのですが、かなり興奮しているようでした。
脇道と大通りの交差点は狭くなっていて、脇道を渡るときに大通りを練り歩く抗議者の人との距離が近くなるので、特に子どもたちが抗議者の人たちと接触しないよう、距離を取るために、大通りからはずっと内側、脇道の中に入ったところを渡るようにしました。
途中の脇道を通って、モンテーニュ通りに到着すると、まるでさっきの喧騒が嘘のよう。
モンテーニュ通りのイルミネーションと、ディオールのウィンドーに飾られていた豪華なドレス。
デモが行われている日だからといって、どこもかしこも危ないわけではありません。
むしろすぐとなりの通りに入れば安全なので、不安な時は落ち着いて移動しましょう。
まとめ
12月初旬の頃のデモは規模が大きく、道路も完全封鎖され、テレビで見る限り、一般の人は近付こうとも思えない状況でしたが、デモが小規模になってきた分、一般の人がそれほど危険を感じずに、デモに簡単に近づけるようになったことが、フランスのデモの最新の注意点です。
ただし、その時の安全管理は自己責任。
もしフランス・パリ旅行中に突然デモに遭遇したら、次のように対応することをおすすめします。
- いきなり巻き込まれることはないので、まずは落ち着く。
- デモが起きても、通行人に指示を出してくれる人はいない。自分の意思で安全を判断する。
- 衝突が起きる前に、憲兵隊とデモが対面しているところからは離れる。
- 離れるときはデモが起きている側からもっとも遠い場所を通って移動する。
- 抗議者の人たちは一般人に故意にけがを負わせるようなことはないが、練り歩く人たちに近づくと接触して巻き込まれる可能性があるので、場所が狭くなるところでは遠巻きになるように行動する。
今、フランスのデモの安全情報に関しては、いろんな情報がありますが、毎週末、デモが2ヶ月近く続く中でも、現地で暮らしているわたしたちは、普段はなんの危険も感じずに生活していることは間違いありません。
ぜひ近々フランスに来られる際は、安全を心がけていただいて、楽しい時を過ごしていただけることを心からお祈りしています。
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