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フランスの燃料税率は今約60%。急速な引き上げ理由に炭素税の深い関わり

フランス生活お役立ち

なかなかおさまる様子を見せない、フランスのデモ。

燃料税の増税が事の発端となり、経済的に苦しい生活を送っている国民の不満が一気に吹き出た形となりました。

しかし、そもそもなんでフランスの燃料税はこんなに急速に引き上げられることになったのか?何をベースに引き上げ率が決まっているのか?が自分でもよくわかっていなかったので、今回、フランスメディアをもとに調べてみました。

みなさんにもご報告したいと思います。

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フランスの燃料税引き上げ理由は?

フランスのエドワール・フィリップ首相は、

国民の不満はしっかりと受け取っているが、気候変動の問題に魔法の解決策はない。

との変わらない姿勢を示しています。

政府の見解では、特に地球環境に大きな影響を及ぼす、ディーゼル燃料に対する増税が必要だとの考えです。

 

以前、こんな記事をまとめてみましたが、

こちらの記事でもおわかりいただけるように、現時点ですでにフランスの燃料税は燃料価格の約60%を占めています。

この状況で、何をベースにこのような勢いで燃料税が引き上げられていくのか、あまり良くわかっていませんでした。そこでフランスの新聞をいくつか読んでみたところ、現政権の前、フランソワ・オランド氏が大統領だった頃に導入された炭素税との深い関わりがあることがわかりました。

 

フランスの燃料税は炭素税と深いかかわりがある

そもそも今回燃料税が高騰した原因は、今のエマニュエル・マクロン大統領の現政権だけにあるのではありません。

2015年、フランソワ・オランド前大統領は、燃料の主な税金である国内エネルギー消費税(TICPE)に炭素排出量の割合を組み込みました。これは、ガソリンとディーゼル燃料の両方に関係する「炭素税」として世界的に知られているもので、その目的は、言わずもがな消費者が炭素の排出の少ないエネルギーの使用に切り替えるように奨励することでした。

当時、この炭素税は初めて課税された2014年は1トンのCO2あたり7ユーロでしたが、2022年には1トンのCO2当たり65ユーロ、2030年には1トンのCO2あたり100ユーロへと、もともと段階的に増加する計画となっていました。

そもそも炭素税が導入された目的は、SP 95やSP 98と呼ばれるガソリン燃料よりも、ディーゼル燃料に大きく課税して、ディーゼルエンジンで走る車の利点をなくそうとしたものです。

石油工業のフランス連合によると、1トンCO2あたり7.50ユーロの炭素税により、ディーゼル燃料の価格は1リットルあたり0,02ユーロ、ガソリンの価格は1リットルあたり0,017セント増加となりました。 さらに、フォルクスワーゲンのディーゼルエンジンが検査のときだけ排気量を制御する違法なソフトを使用していたとする「ディーゼルゲート」スキャンダル後、ガソリンに対する税を1セント引き下げ、ディーゼル燃料に対して1セント引き上げることも決定されました。

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さらに、エマニュエル・マクロン政権になると、動きはさらに急速になります。まず、炭素税の年上昇率の割合は当初計画されていた以上となり、 2022年には、もともと計画されていた65€ではなく、1トンのCO2あたり86€になりました。これはオランド政権時代の計画から 実に32%のアップという勢いで、これは2017年に2018年の予算として可決されたもの。さらに、この炭素税の増税とは別に、ガソリン価格との差を埋めるため、ディーゼル燃料には2019年1月には1リットルあたり0.26ユーロの新たな課税があることになっていました。(現在は凍結)

(source: LP/INFOGRAPHIE)

もともとこの炭素税の導入は、家計に直接影響を及ぼす燃料に係る増税の負担を軽くするためだったはずなのですが、実はVATと呼ばれる付加価値税(日本の消費税に近い)は確実にドライバーである国民の負担になるからくりになっています。

というのは、燃料価格に適用されるVATは、TICPEを含む価格全体に対して計算されるので、炭素税が急激に引き上げられると、燃料価格に適用される20%のVATの価格も急激に引き上げられます。もし計画通りに炭素税が増税となれば、2022年までに、ディーゼルの燃料税は1リットルあたり約0.23ユーロ、ガソリンの燃料税は約0,115ユーロ上がることになります。

 

TICPEはフランス政府にとって、付加価値税、所得税、法人税に次ぐ4番目に大きな収入源であり、2019年の予算では、377億ユーロをもたらす見込みです。このうち170億ユーロが政府の収入となり、123億ユーロが地方自治体に割り当てられ、12億ユーロが交通インフラに割り当てられる予定となっています。そして、TICPEの約19%に当たる72億ユーロが、再生可能なエネルギーを開発するために使われることになります。

結局は、エネルギー移行のための制作ではなく、政府の収入源確保が目的ではないかという見方もあるほどです。

昨年、2018年予算に関する上院の報告書によると、燃料税の増税により、ディーゼル燃料を多く消費する世帯は、2017年と比較した場合、2022年には+272ユーロの燃料税を支払うことになるとしています。

もちろん、この計算には、原油価格や為替の影響は考慮されていないのです。

 

まとめ

週に2-3回程度ではありますが、わたしもドライバーです。しかも我が家の車はディーゼルです。

他の税金や電気代などの基本的な生活費がじりじり値上がっていますので、年に200ユーロ程度とはいえ、やはり出費としては痛いです。

今回税金が上がるから、車を買い換えたいのはやまやまなのですが、どんなに安くても10,000ユーロはくだらないコストになりますし、中・高所得者層の場合、政府からの援助も出ませんので、この程度の利用頻度で車を買い換えるかと言われると、非現実的です。

とはいえ、子どもの習い事の送り迎えや、週1回のハイパーマーケットの買い出しには車がどうしても必要なので、乗る回数や距離をへらすこともできません。

そうすると、結果的には税金を払うことで対応することを強いられることになります。

おそらく地方に住んでいて、家族の人数と所有する車の数がほぼ一致するような家庭の場合、もともと燃料代が安いという理由でディーゼル車を購入していることが多いし、所得も都市部に比べて低いのが現実なので、結果、増税に耐えるしかない、という状況はもっと深刻な問題でしょう。

でもこれで本来の目的である環境問題を解決することができるのかどうか?

デモを起こして増税のタイミングをただ遅らせただけでは、環境問題も国民の脆弱な購買力についても解決にならない、本当に難しい課題だと感じています。

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