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赤いスカーフのフランスのデモはなぜ起きた?いつまで続く?これからどうなる?

フランス旅行お役立ち

1月27日日曜日、パリ市内Nationナシオンの広場に、10000人以上が集まって行われた新たなデモ、Foulards rouges(フラール・ルージュ)と呼ばれる「赤いスカーフ」の人々によるデモ。

うわー、またフランスで新たなデモか!

フランスはまた治安が悪くなるとか、危険だと思われた方もいると思いますが、わたしはこの運動が行われることを知ったとき、フランスらしいと思ったし、むしろ黄色いベスト運動の先がようやく見えたような気がして安心するような気持ちになりました。

今回はフランス在住のあおいそらが、赤いスカーフ運動に参加している人々はどんな人々で、なぜ今回デモを行ったのか、フランスのメディアの論調を通して、これからフランスのデモがどうなっていくのかの見通しについてまとめてみたいと思います。

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赤いスカーフのデモはフランスでなぜ起きたの?

12月はフランスでもっとも商業活動が盛んな時期。普段は財布の紐をしっかりと占めているフランス人も思い切ってお買い物するときです。

今は11月のブラックフライデーやインターネットで買い物をする人が増えたとはいえ、それでも12月はフランス人家庭の支出額がもっとも高い一ヶ月。

また、フランス人だけでなく、クリスマスホリデーにパリに来る外国人観光客数は毎年とても多いです。

イルミネーションもきれいだし、ロマンティックなクリスマス休暇を期待してやってくる人も多いでしょう。

 

それなのに、去年の12月は毎週末危険なデモ活動が繰り広げられ、みんなが不安になるような状況に街は陥り、観光スポットや店が荒らされて、市民や観光客が遠のく事態に。

本末転倒じゃないの!とわたしの周りの人々は思っていました。

 

もともとGilets jaunes 黄色いベスト運動が起きたきっかけは燃料税の増税でしたが、もっと根深く背景にあったのは、市民の苦しい生活に対する不満でした。

日本に比べて自動車の燃料が高いのは、フランスには自動車税がないんだから普通なのですが、地方に住んでいる人たちは自家用車しか足がなく、商売をやっている人たちにとって車は仕事の重要な手段でもある中で、そのコストが上がってしまっては自分たちの苦しい生活はますます苦しくなる。

そういう現実をマクロン大統領をはじめとするフランス政府はわかっているの?というものでした。

はじめのうちはマクロン大統領の上から目線発言や行動と、それに対して怒っている国民の姿が報道されていましたし、デモに参加していない人も黄色いベスト運動活動をする人たちの気持ちには強く賛同する、というものでした。

もちろん黄色いベスト運動に参加していた人たちの大多数は、暴力行為なしにデモ活動を行おうとしていたのですが、当初デモ活動の規模に対して統制がとられなかったために秩序が見られず、一般人に対して自分たちが道路を封鎖するのは当然、という態度で望んでいた人が多かったため、破壊者と呼ばれるなんのポリシーもない人たちも紛れ込み、結果フランスの経済にもっとも重要な12月の週末に、パリをはじめとするフランスの複数の街や周辺の交通網が危険にさらされたのが現実

そんなことをすれば、まわりまわってフランス人の生活はさらに苦しくなりますよね。

多くのフランス国民は矛盾を感じていたのです。

 

実際フランスの商業活動はものすごい大打撃を受けました。

例えばLSAというフランスの流通に関する雑誌の記事を読むと、2017年12月に比べて、2018年の12月のおもちゃ・ゲームの売上は-8.5%店舗への来客数は-3.1%クリスマス特需品の売上は-3.8%であり、食品を除くと数量ベースで-8.1%、金額ベースで-3.3%の売上だった、という推測値がでています。

損失を受けた売上は1億5000万€規模、経常利益ベースで3000億ユーロだったのではないかとしています。

 

テレビでも、インタビューを受けたホテルの支配人が、アメリカ人、日本人、中国人のキャンセルが相次いだ、と答えていました。

実際はそれほど危険な状況ではないのですが・・・

当初から、暴力行為についてはインタビューに答えている人の多くの意見が「訴え方が間違っている」というものが大多数。

そんな動きの中で、「暴力に頼らず、民主主義について話し合おう」という考えを持った人たちから「赤いスカーフ」の人々の活動が開始しました。

「ストップ。もう十分だよ。」

公式サイトによると、中心団体は11月に発足したとある中で、12月に発足した団体もあり、複数のソースを読めば読むほど、自分がだれよりも一番に立ち上げたんだと主張するフランス人らしい姿を見るのですが、いずれにしても、赤いスカーフの団体は、すでに黄色いベスト運動のデモの初期の段階から発足していたことがわかります。

「赤いスカーフ」団体には、ブルターニュ、アルプス、ノルマンディ、ロワールなど、地方別に10の団体が存在しており、フランスの法律にのっとって、アソシエーションとして公式に国に登録されています。

黄色いベスト運動は、公共の場所を使ってデモを行うときは必ず届け出をしなくてはいけないところ、FB(フェースブック)を中心にSNSで開催場所を通知していただけで、公式に届け出をして来なかった、という点に赤いスカーフの団体との違いがありますね。

 

赤いスカーフのフランスのデモに参加した人はどんな人たち?

French ‘red scarves’ (foulards rouges), critics of violent ‘yellow vest’ (Gilets Jaunes) protests demonstrate in Paris on January 27, 2019. (Photo by Alain JOCARD / AFP)

上の写真はAFPの撮影した赤いスカーフのデモの写真で、フランスの新聞フィガロの記事で使われていたものですが、こうしてみると、全員が赤いスカーフを使っているというよりは、赤いものを身につけられる人がつけているという程度ですね。

公式サイトでは赤いスカーフではなく、白いTシャツに「J’aime ma république(わたしのフランス(共和国)が好き」というロゴがトリコロールにデザインされたものが販売されていますが、寒くて半袖の公式Tシャツを着てデモに参加するということは無理そうです。

フランスの新聞LIBERATIONによると、ときどき見かけられたプラカードには「民主主義」「話し合いを」と書かれていたそうです。

 

最終的にはFBに参加を表明したのとほぼ同レベルの1万人強の人が27日のデモに参加したということですが、本来の活動の目的通り、危険な状態は起きなかったといいます。

 

このデモに参加した人たちはどんな人たちだったかというと、技術者や看護婦、パン屋さんなど・・・年齢層は高めだったようですが、これまで沈黙していた人たちで、さまざまな社会階級の人たちです。

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もともとは黄色いベスト運動に参加していた人もいました。

別に現大統領のやり方が正しいとは思わないけれど、黄色いベスト運動に伴う暴力は間違っている、という主張をする人もいれば、堂々とマクロン大統領への支持を表明している人たちもいます。

ただ共通しているのは、自分たちの考えを示すために、国の経済活動を妨げたり、何かを破壊するような極端な活動は拒否する、という信条。


(参考:francetvinfo

ジャン=ミッシェル・ブランケール国民教育・青少年大臣のように、政治家であってもこの赤いスカーフの活動に参加したい意向をはっきりと示した人もいたし、混乱を招くとして政党としてこのデモへの参加は呼びかけないと表明した野党政党出身の国会議員でも、党の指示に従わず、デモに参加した人もいました。

ただし、政治家の参加の是非については、国内でも意見が大きく分かれているようです。

(参考:Figaro

 

赤いスカーフのデモで、これからフランスはどうなっていく?

今回、初めてフランスの「デモ」に興味を持ち、いろいろな記事を読んできましたが、日本語で「デモ」と一言で訳されているフランス語は1つではないことに気が付きます。

一番わたしたちの「デモ」のイメージに近いフランス語は「manifestation マニフェスタシオン」です。

それから「mouvement ムーヴモン」、日本語だと運動、という言葉が意味とも合致します。

 

でも今回のこの赤いスカーフの運動について書かれているとき、「manifestation」という言葉を使って表現しているメディアはほとんどありません。

「marche マルシュ」英語の「マーチ」、日本語で言うところの「行進」という言葉を使って、「行進に参加する」、という表現が多く使われています。

 

日本では「デモがデモを制するはずがない」という意見もあるようですが、もともと今回の赤いスカーフの人々によって行われた「デモ」と「黄色いベスト運動のデモ」は違う本質のものという捉えられ方をしているのです。

 

そもそもフランス人たち自身の間で、こんな多くの人が黄色いベスト運動のあり方に疑問やストレスを感じているのに、この沈黙状態が続くわけはない、という考えが広がっていました。

 

フランス人って納得できなければ決して黙っていないんですね。たとえ自分一人であっても思ったことを口にすることを恐れない

例えば今日も、駅の上りのエスカレーターで、本来なら右側はエスカレーターの動きに身を任せて静止する人の側、左側は歩いて上る人が通る側とされているのに、階上のホームに向かう人が多すぎて、2列とも列が静止してしまったら、下から女性が、

「ったく、本来は左側は歩いて登っていく人の側とされているわけでしょう、それをだれも理解しないで!」と登っていくエスカレーターに乗っている人々を見上げて一人で意見しているのです。

(怒りあらわに怒鳴っているというわけではなく、大きな声で意見を言っている、というふうです。)

 

こんなことは日常茶飯事。

今のフランス人にフランス革命の精神が根付いているかどうか以前に、どんな意見であっても、思ったことを相手に伝える権利がある、相手には自分と異なる考えを主張する権利がある、と思っているのが基本的なフランス人の精神なのです。

 

もともと黄色いベスト運動を起こした人たちの思いは「自分たちの生活がどんどん苦しくなっていくのにはもう耐えられない!この状況を表現しなくては!」というものだったはず。

ところが、当初のデモ活動の無秩序状態に乗じて、暴力や極端な表現が繰り返されるようになってしまい、警察による制止や政府からの新たな対応案の提示では収まりがつかなくなっているなかで、今度は「もうこの状況は十分だよ!話し合いで解決していこうという気持を表現しなくては!」という人たちが現れたのです。

 

正直このデモが繰り返される状況がいつまで続くのか、ということについて現時点ではだれにも明言できない状況ですが、この日曜日の「赤いスカーフの人々」の行動により、フランスのデモの流れが急速に大きく変わってくる可能性は大いにあるでしょう。

 

まずその1つ目の理由として、「黄色いベスト運動」にまつわる暴力や経済活動を阻止するような行動は間違っていると思いながらも沈黙を保っていた人が次々と声を上げ始めたことがあります。

年始にフランス人の集まりに呼ばれて黄色いベスト運動のことについて話していたら、

「米国系の大手ITシステム会社で働いているが、こう経済活動が停滞するとフランスの会社はIT関係の予算から削っていく。もう十分思いは伝わったよ、だけどもういい加減仕事はさせてほしい、仕事しなくちゃいけないんだ」

と言っていた人がいました。

「もう十分思いは伝わったから、そろそろ仕事しようよ!」という考えを声高に挙げられるようになったことで、黄色いベスト運動の暴力的な側面、終わりが見えない状態で繰り返されるデモ活動は国民にもはや支持されない風潮が出てくる可能性が考えられます。

 

2つ目は、フランス人は警察などの権力が嫌いな人が多いです。

警察や憲兵隊には徹底的に抗おうとする人も、話し合いを行っていく中で、同じ市民の立場から働きかけられれば、捉え方が違う可能性は高いですね。

 

また興味深かったこととして、日曜日の赤いスカーフのデモ参加者へのインタビューでは、堂々とマクロン大統領の政策について支持していることを話している女性がいましたが、今後、現大統領に賛成しているマクロニアンと呼ばれる人たちが意見できる機会も増えてくるのではないかと感じています。

ただこの点については、フランスのメディアの中で、マクロン現大統領をシャルル・ド・ゴール大統領になぞらえ、「1968年の5月革命の状況と比較してはいけない」と警鐘しているものがありました。

デモが毎週末行われるようになって約2ヶ月、マクロン大統領も国民との直接対話をする機会を設けるようになって、統制を立て直そうとしているところですが、大統領に近い筋のひとたちの間にはあまりその動きに関わらないようにしたいと表明している人たちがいます。

国会議員や政治家がこのような動きに直接関わることで、当時のように国民が極端に扇動されてはいけない、慎重になるべきだという論点は、今のわたしたち日本人ではなかなか考えつかないものではないでしょうか。

 

今日時点では、今後の赤いスカーフの人々の行進の次の予定についての情報はインターネットでは見つかりませんでしたが、今後ますます黄色いベスト運動と、赤いスカーフの人々の活動については国内で議論されていくことと思います。

今後の動きに注目していきたいとともに、毎週末の混乱が早く収束して、日本のみなさんに安心してフランスに来ていただける状況が戻ってくることを祈りたいと思います。

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